キラめく水饅頭

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今にも潰れそうな和菓子屋の店先で、貧相なオッサンが饅頭を食べていた。
「あんた、また商品食べて!」
恰幅の良いオバサンが顔を鬼にしている。
「どうせ売れ残るんだ」
「たまには新作の一つでも作ったらどうだい!」
このオッサン、和菓子職人であるらしい。オバサンは妻だろうか。
「へいへい」
オッサンはヤル気のない返事をして店奥に消えた。

時はクリスマスシーズン。
和菓子屋に女性たちの行列が出来ていた。
「美味しそう!」
「綺麗!」
「食べて良いの?」
それはオッサン渾身の新作、水饅頭。とにかく一度食べてもらおうと試食を始めたのだ。それもライトアップを施して。
ライトに照らされた水饅頭はキラキラと輝き、幻想的に仕上がっていた。
キラめく水饅頭は飛ぶように売れた。しかし長続きはしなかった。買った水饅頭にはライトアップなどされていない。そんな水饅頭は、ごく普通の水饅頭でリピーターが付かなかったのだ。
その他
公開:18/11/26 23:59
更新:18/11/27 00:13
ライトアップ試食 スクー

壬生乃サル

まったり。

2022年…3本
2021年…12本
2020年…63本
2019年…219本
2018年…320本 (5/13~)

壬生乃サル(MiBU NO SARU)
Twitter(@saru_of_32)

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