隣のザシキワラシ

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平成最後の座敷童は何を隠そう私の隣人だ。
妖怪ではない。両親はもちろん血統書付きの人間だ。
ただ、彼は頗る不幸だった。
道を歩けば車に撥ねられ、歩行者天国では喝上げに遭い、椅子に座れば背もたれがへし折れ、転んだ先には角がある。
相次ぐ災難に妖怪並の復帰力で彼は怪我から立ち直り、今日も元気に怪我をする。
死神憑きの間違いではないかと思わなくもないが彼が座敷童と揶揄される所以。それは妙な星巡りというべきか、彼が不運に見舞われれば身内に幸が舞い込む所にある。
ある日、私の中で疑心が芽生えた。
マンホールから這い上がる彼を捕まえて「辛くないの?」と聞いてみた。
「痛いけどそれほど悪くもない。私は座敷童だそうだからね」と彼は言う。
「もしそれが本当だとしたら、尚更貴方が可哀相よ」
「そう思うかい? それがそうでもないんだよ」
私の頭上まできた手は少しの間逡巡して離れた。
「私も家族も人間だからね」
その他
公開:18/11/26 19:11
更新:18/11/26 20:47

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