とある小島のモノレール(跨ぐやつ)

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 表彰式に招待され、私はとある小島を訪れていた。
 港からタクシーに乗っていた間は、町工場の火災跡に、ぼうぼうと生える草の所々を、赤錆びた歯車状のものが陥没させていたり、今ではもう訪れる人もない、朽ちてひびわれた巨大迷路と、その錆びたトタンの管理事務所みたいな土産物屋などがぽつりぽつりと見えるだけの風景の中を、淡々と走っていたのであった。
 それが、がやがやとした高架線の駅に入ると、上へ下への大騒ぎで、私は少し憂鬱だった。
 高架線はモノレールだった。跨ぐやつだ。
 私はレールを走るものはすべからく先頭車両の最前列に座ることにしていたので、今回も躊躇わずに先頭車両に乗車した。車内は対面式の青いベンチシートである。
 しかし、出発時の反動から、私は先頭ではなく最後尾の車両に乗ってしまっていたことに気づいた。だがそれよりも不安だったのは、私が、自分の降りるべき駅を知らないということであった。
その他
公開:18/11/26 13:39

新出既出

星新一さんのようにかっちりと書く素養に乏しく、
川端康成さんの「掌の小説」のように書ければと思うので、
ショートショートとはズレているのかもしれないです。
オチ、どんでん返し、胸のすく結末。はありません。
400文字、おつきあいいただければ幸いです。

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