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マリさんは泥棒だ。
ある日、マリさんはお昼に家に帰ってきて、何処かの家から外して持ってきた窓を僕に渡した。こげ茶の窓枠に雨の流れた跡が残ったガラス。古い洋館の窓だったんだろうか。
僕はそれを壁に立て掛けて、窓を手前に引いて開けると、古い部屋の中が見えた。わっ、と驚いて窓を閉じた。
違う違う、と言い、マリさんは窓枠を支えながらガラスを外向きに開いた。
すると、カモメの声がして、波の音がする。光を照り返す海が窓の向こうに見えた。
その夜、マリさんは窓を抱えて出て行った。何処かの病院の病棟にそっとはめてくるらしい。
ファンタジー
公開:18/11/26 12:05
更新:18/11/26 19:33

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