カメ

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マリさんは泥棒だ。
その日、マリさんは亀の甲羅を持ち帰った。
「亀から盗んだの?」
「ううん。くれたの。自分が死んだら甲羅を持っていけって」
その亀はちょうど一万年生きて、自分が死ぬ時にマリさんを呼んだという。これまでマリさんに海のことを教えてくれた亀だった。
一万年も生きた亀の甲羅はとても大きい。僕は中に潜り、身体を丸めた。甲羅の中は薄暗くて、なぜか安心する。首をひょっこり外に出すとマリさんが笑った。
マリさんも甲羅の中に潜った。
「ここに背骨があって、ここに心臓があって、胃があって…」
甲羅の中から声がする。
「全部に知恵があった。とても盗み切れなかった」
亀の甲羅の中で、マリさんが身を縮めて泣いていた。僕は左前足の入り口から、タオルを渡した。
タオルがぐちゃぐちゃになるまで涙を流した後で、マリさんは亀との思い出を僕に語った。
ファンタジー
公開:18/11/27 22:26

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