アキノキリン

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アキノキリンソウと、セイタカアワダチソウの違いが分かる奴だった。
「全然違うよ」
こんな空の青い日、すっくと伸びる黄色をバックに笑った。
「やっぱり、長いからキリンなんだ」
つま先立ちで背比べをやってたら吹き出された。
理由はずっと後で知ったけど。

「持ってて」
ぼろぼろの古い図鑑をくれた。
綿毛みたいな髪と、カッターシャツがきらきらした。
頭半分高くから、軽く肩を叩かれた。
それがあいつを学校で見た最後だった。
それがあいつと学校で交わした、ほぼ唯一の接点だった。


近所の電車道。下葉も枯れ、茶色い綿毛になった群生。
『全然違うよ』
(それでも、これが俺のアキノキリンソウだ)
黄色の残った1本を摘む。
ページの黄ばんだ図鑑は、今も部屋の本棚にある。

今年の年賀状、何にしようか――。
早く退院出来ますように?年明け早々、験が悪いな。
ああ、そうだ。
俺、花屋になったよって書かないと。
青春
公開:18/11/27 13:45

創樹( 富山 )

創樹(もとき)と申します。
葬祭系の生花事業部に勤務の傍ら、物書きもどきをしております。
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ベリーショートショートマガジン『ベリショーズ』
Light・Vol.6~Vol.13執筆&編集
他、note/monogatary/小説家になろう など投稿サイトに出没。

【直近の受賞歴】
第一回小鳥書房文学賞入賞 2022年6月作品集出版
愛媛新聞超ショートショートコンテスト2022 特別賞
第二回ひなた短編文学賞 双葉町長賞

いつも本当にありがとうございます!

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