雲のセーター

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風神のお気に入り、白く薄い雲製セーターに穴が開いた。
雲屋では同じ雲は入荷未定、穴が広がり遂に捨てる決心をしたとき、風神は雲屋に仕立屋を紹介された。
青みの強い濃い灰色の雲が、たちまちセーターを覆う。
「色違うけど」
「冬は色より厚みっすよ! 色は足せるし」
見る間に白や金色が混じりやがて裾の方が朱鷺色になった。風神は息を呑んだ。
が、厚い分セーターは大変重い。
「残念だけど無理だ。動けない」
お代は要らねっす、と雲をほどきかけた彼に風神は料金を払った。
飽かず眺めブラシをかけても袖は通せぬ。悩んだ末、風神はそれをフリマで売ることにした。
「風神! 久しぶり」
心臓が強く打った。かつての憧れ、雷神が目の前に。
「これあったかそう!」
「……あげるよ。けど重いよ?」
「平気平気。この子寒がって。あ、買うから」
雷神は隣にいた女の子にセーターを着せた。
小さな稲妻がセーターごと宙を駆け た。
青春
公開:18/11/27 02:17
更新:18/11/27 03:30
風神雷神 実は屏風から想起したものではなく でもセットで考えてしまうのは刷り込みか?

UKITABI

ショートショート初心者です。
作品をたくさん書けるようになりたいです。

「潮目が変わって」(プチコン 海:優秀作)
「七夕サプライズ」(七夕ショートショートコンテスト:入選)
「最高の福利厚生」(働きたい会社 ショートショートコンテスト:入選)
選出いただきました。

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