俺たちの時代はシンドローム

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課長の小言には「俺たちの時代は」が必ず付く。

「俺たちの時代は酒を断るなんて許されなかったぞ」
「俺たちの時代はもっと遅くまで残業していたもんだ」

「俺たちの時代は…」
僕はいつものように小言を受け流そうとしていたが、課長は途中で激しく咳き込み出した。
「課長、大丈夫ですか」
課長は椅子から滑り落ち、ヒューヒューと喉を鳴らしながら苦しそうにもがいている。
先輩が慌てて救急車を呼んだ。僕は課長の背中をさすった。

「ガハッ」
咳とともに課長の喉からフロッピーディスクが飛び出した。

到着した救急隊員は処置をしながら話した。
「おそらく『俺たちの時代はシンドローム』ですね。過去を引き合いに出したがる方がなりやすい病気で、原因は未だ解明されていません。付き添いはどなたが」
全員が僕を見た。

僕は不安な気持ちで救急車に乗り込んだ。
課長はすでに体の半分ほどがフロッピーディスクに変化していた。
その他
公開:18/11/27 01:02

ぱせりん( ひろしま )

北海道出身です。

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