壁猫。外伝①～音楽室のローレライ

うちの音楽室、出るってよ。見に行かね？
ＬＩＮＥの眉唾。カラオケで酒盛りやらかした末の肝試し。少し抜かなきゃ路上で寝そうだし、明日は絶賛サボり予定。要は暇してた。
下の下のゲス校の更にカス。パクられたって、親父もお袋もアウトオブ眼中。ついでに音楽先生どものイメチェンだ。作品用（落書きじゃなく俺的にアート）スプレーと刷毛抱え乗り込んだ。

無人の廊下、例の音楽室の５０ｍ手前、細い音がする。
ピアノ？違う人の声。
みんな逃げた。最後尾の俺以外一目散に。
俺は固まってた。恐いから？違う――。
こんな声初めてだ。高く、低く、泣くみたいな切ないビート。鳥肌立って足震えて熱くて寒くて、
気付いたら俺が泣いてた。

正体は確かめなかった。
何でもいい。とにかく半端なく凄ぇもんが、この世界に、こんな近くにある。
ふらふら校門出た夜明け。どっかの店の壁に、猫らしき絵を見た。
そいつを軽くかまい、家に帰った。