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毎朝、廊下に響く足音が私の独房に近づいて来ると、私は目眩がするほどの胃の痛みに襲われる。足音が目の前に差し掛かった時、私の緊張はピークに達し、息ができなくなる。そして足音が通り過ぎると、明日もまたあの足音を聞かなくてはならないのだ、という深い憂鬱に取り憑かれた一日が始まる。もう何年もそんな朝を迎えてきたが、それも今日で終わりだ。
看守が、ハッキリとした口調で私の囚人番号を呼び上げ、刑の執行を告げた時、私は少し笑っていたかもしれない。その時感じた開放感は、子供の頃の卒業式の気分に似ていた。窮屈な社会からの解放と、新しい世界へ踏み出す不安が入り混じった清々しさ。もうこの教室に来ることはないのだと思うと急に寂しいような悲しいような気がして来る、そんな気持ちだ。そうだ、明日の今頃私はもう死んでいるのだ。
そう思うと、ようやくなんだか少し怖いような、寂しいような気がしてきたのだった。
看守が、ハッキリとした口調で私の囚人番号を呼び上げ、刑の執行を告げた時、私は少し笑っていたかもしれない。その時感じた開放感は、子供の頃の卒業式の気分に似ていた。窮屈な社会からの解放と、新しい世界へ踏み出す不安が入り混じった清々しさ。もうこの教室に来ることはないのだと思うと急に寂しいような悲しいような気がして来る、そんな気持ちだ。そうだ、明日の今頃私はもう死んでいるのだ。
そう思うと、ようやくなんだか少し怖いような、寂しいような気がしてきたのだった。
その他
公開:19/02/19 20:05
巣々木尋亀(すずきひろき)と申します。
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