Dead-man running

「死体が運ばれている」
Ｉ＆Ｕ社からの通報で、警察と救急とが出動した。
　同社は、契約者の健康状態をリストバンドとアプリとで常時監視し、異常の際は対処するサービスを提供している。
　午前８時２４分３６秒。契約者Ｔ氏（６７）がその場に静止し、心拍等が激しく上昇した後に途絶え、４２秒後に分速120Ｍ程の速度で移動を始めたという。
　まもなく、該当地区付近を走る年配の男性を発見。男は「俺は絶好調だ」と救急を拒否。巡査が話を聞いた。男性はリストバンドを装着しており、Ｔは自分だと名乗った。
　自称Ｔを交番へ連行。さらに心拍停止地点を捜索したが、何も発見できなかった。
　数時間後、関係者がＴ氏本人であることを確認。Ｉ＆Ｕ社は機器エラーを認めなかったが、Ｔ氏は「訴えてやる」と憤慨して帰宅した。
　翌朝、ハイヤーの運転手が玄関で倒れているＴ氏を発見した。死亡推定時刻は前日の午前８時から１０時の間であった。