壁猫。外伝④~賽の彩華(さいのいろは)

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最初、嫌なもの見たと思った。
下校中、『落書き』が前にいた。時代錯誤な改造。派手な頭。群れて粋がって、独りじゃ何も出来ないクズ。
金泥の舞台を連想して、壁のスプレーも腹立つ。後で消す手間とか、掛かる金とか考えた事あるのか。
この先に、連中が溜まる文具屋がある。裏で騒いで、硝子割って、ゴミ捨てて、煙草吹かして。ゴミ箱置いてあるけど、わざと周りに散らす。あんな害虫のせいで、うちは不良校扱い。もう誰か通報して、全員ブタ箱にぶち込め。
――って、思うだけで何もしない俺は、もっとクズだ。

角を折れてく背中。画像押さえて店にチクるか。イライラが頂点の俺は、珍しく積極的に奴を追った。

店の裏で、『落書き』は刷毛を握ってた。
煙草の焦げや煤が重なった壁に、猫がじゃれてる。
外なのに、部屋みたいに棚があって、本が置かれて、他にも色々。

骨に埋め尽くされた賽の河原から、奴は子猫を救ってるみたいに見えた。
ミステリー・推理
公開:19/02/20 20:00
更新:19/02/22 18:41
壁猫。エピソード1・5(B)

創樹( 富山 )

創樹(もとき)と申します。
前職は花屋。現在は葬祭系の生花事業部に勤務の傍ら、物書き(もどき)をしております。
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ベリーショートショートマガジン『ベリショーズ』
Light・Vol.6~Vol.12執筆参加
他、note/monogatary/小説家になろう など投稿サイトに出没。

【直近の受賞歴】
第一回小鳥書房文学賞入賞。2022年6月アンソロジー出版
愛媛新聞超ショートショートコンテスト2022 特別賞受賞

いつも本当にありがとうございます!

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