余命30秒
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「余命30秒です」
私と同じ小さな丸椅子に座る医師が、気の毒そうに私の目を見つめて言った。
「……今、なんと」
「お気の毒ですが、余命25秒です」
……聞き間違いではない。それも、あと25秒になっている。彼は私が幼いころから世話になっているからわかるが、真面目を絵に描いたような人物だ。そんな彼が、「余命30秒」だなんていう冗談をつくか。いや、つかない。だとしたら……。
私は唾を大きく飲んだ。
「……先生、あと何秒ですか」
「あと18秒です。……お気の毒ですが」
医師は目頭を押さえ、顔を伏せてしまった。そうしたいのは私の方だ。今日が人生最後の日なのか。動機が早まり、喉はアリの巣のようにカラカラになった。私は発狂寸前だが、恐怖のあまり、声がでない。
廊下から死亡事故のニュースが聞こえた。しかし、こんな状況でも、私は自分の死をイメージすることができなかった。
私と同じ小さな丸椅子に座る医師が、気の毒そうに私の目を見つめて言った。
「……今、なんと」
「お気の毒ですが、余命25秒です」
……聞き間違いではない。それも、あと25秒になっている。彼は私が幼いころから世話になっているからわかるが、真面目を絵に描いたような人物だ。そんな彼が、「余命30秒」だなんていう冗談をつくか。いや、つかない。だとしたら……。
私は唾を大きく飲んだ。
「……先生、あと何秒ですか」
「あと18秒です。……お気の毒ですが」
医師は目頭を押さえ、顔を伏せてしまった。そうしたいのは私の方だ。今日が人生最後の日なのか。動機が早まり、喉はアリの巣のようにカラカラになった。私は発狂寸前だが、恐怖のあまり、声がでない。
廊下から死亡事故のニュースが聞こえた。しかし、こんな状況でも、私は自分の死をイメージすることができなかった。
SF
公開:19/02/20 16:08
更新:19/02/20 16:19
更新:19/02/20 16:19
大学生です。
ショートショートは読むのも書くのも大好きです!
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