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「ね、きれいでしょ。ダム湖じゃないの。この池は貯木池。私達は「花筏」って呼んでいるの。池を取り巻く枝垂桜のハラハラと散る花弁が、浮かんでいる丸太をみんな隠してしまうほど幾層にも重なって、白や薄紅や深紅のだんだら模様が漣や丸太の起こす引き波で、万華鏡の中みたいでしょ。花弁はとても厚く積もっているから、そっとだったら、あそこにある中ノ島まで上を渉っていけるのよ。花弁の山の真ん中の、あの枝垂桜、太いでしょ。あそこから見ると、世界のすべてが桜の花弁なの! 桜の花弁しか見えなくて、桜の花弁で息が詰るほどよ。素敵だと思わない?
でも本当に素敵なのはね、幾層にも重なって浮かぶ桜の花弁を、水の中から見上げること。目も体も脳みそも、みんなみんな桜色に染まってしまうの。
ね、行ってみない? 中ノ島まで。見てみない? 桜色の光。
フフ。ここは花筏貯木場。桜の花弁に塗れた丸太がたくさんたくさん浮かぶ池」
でも本当に素敵なのはね、幾層にも重なって浮かぶ桜の花弁を、水の中から見上げること。目も体も脳みそも、みんなみんな桜色に染まってしまうの。
ね、行ってみない? 中ノ島まで。見てみない? 桜色の光。
フフ。ここは花筏貯木場。桜の花弁に塗れた丸太がたくさんたくさん浮かぶ池」
ホラー
公開:19/02/20 15:29
星新一さんのようにかっちりと書く素養に乏しく、
川端康成さんの「掌の小説」のように書ければと思うので、
ショートショートとはズレているのかもしれないです。
オチ、どんでん返し、胸のすく結末。はありません。
400文字、おつきあいいただければ幸いです。
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