ショートショート「小説家のリビングにて」

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ふうん。面白いね、そのプロット。
キャラの背景とか今後の展開とか掘り下げられそうだし。
けっこう人気が出るんじゃないかな。売れ線だよ。
なんなら僕が貰いたいくらいだ。ははは。
あれ?どうした、ため息吐いて。
『もう書かれてるんですよ』?
なんだよ、既存作品か。人を担ぐなよ。作者は誰?
......俺?
いやいやいや、嘘つくなって。
......文庫本持参とは用意周到だな。
作者名も確かに俺だ。奥付の発行日も20年前。
まったくもう、恐れ入ったね!
俺さあ、覚えてないのよ自分の小説。
執筆中は四六時中そのこと考えてるんだけどさ。
出版されたらそれっきり。
案外、これが小説家として長くやっていくコツなのかもな。
できた端から忘れていくっていうのが、さ。
この本にサインが欲しいのかな?
違う?
作家志望でもファンでもないなら、君の用事は何だ?

...君が?俺の?
息子?

いや、覚えてない。
その他
公開:19/02/18 07:32
更新:19/02/18 07:50

佐賀砂有信( お前の後ろ )

さがすな ありのぶ です。
グラインドコアとサメ映画が好きです。

長めのやつ
https://kakuyomu.jp/works/1177354054880370626

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