くっつくうちわ

0
4

ある暑い日、政治家と科学者が頭を悩ませていた。

どうしたら我が国の争いを収めることができるのか?

科学者は内輪で話す人々が皆、団扇を持っていることに着想を得て“どんなものでもくっつくうちわ”を開発した。

敵対者同士をうちわで扇げば、ひとつの内輪になり、小さな内輪は次々と大きな内輪になっていった。

年の瀬、科学者は山の頂上にいた。眼下の戦場にいる、国内最期の大きな二つの内輪をくっつけるためだ。このために開発した特大うちわのスイッチを押すと、戦場へ向けて強風が送りこまれた。そして見事に大きな二つの内輪は、一つの巨大な内輪になった。

歓喜した科学者も内輪に入ろうと山を降りた。しかし、人々の間には不穏な空気が流れていた。

ある者はうちわを使い他国とも内輪になろうと、ある者は今の内輪だけで幸せに暮らそうと、ある者はうちわの技術を輸出して儲けようと言って揉めていた。

うちわ揉めだった。
その他
公開:19/02/17 22:29

こんの( 横浜 )

劇団コピュラというユニットを催しています。

コメントはありません

コメント投稿フォーム

違反報告連絡フォーム


お名前

違反の内容