ウィザード王子とノベリスタ②

2
5

『俺、魔法使いだから』
隣りの大路のちびは、中坊になっても相変わらずだった。
白雪姫の鏡みたいに、『なんでもオトミオシのまほーつかい』
夢見がちなガキが、夢見たまま育った。周り中(父親含めて)笑ってた。遊び友達は多かったけど、2年も3年も言い続け、やがて学校でも浮きだし、腫れ物になった。

「お前さ、ちょっと考えな」
片棒担いで、夢を見せ続けた私が言うのは卑怯だとしても。
「せっかく成績良いんだし、真面目に勉強して、上目指せ」
高校の第一志望、『魔法学校』なんて書いてきた日には、さすがに見過ごせない。会社ドロップアウトして、バイトと物書きの掛け持ちで食ってる、じき三十路女の家に入り浸って、だらだら本読んで。
「……これじゃ、母ちゃんに顔向け出来ないぞ」

完璧に裏切った事を、その顔で思い知った。
翌日から大路は来なくなり、絵に描いた様な優等生面で高校に通い、もう魔法のまの字も喋らなかった。
青春
公開:19/02/18 01:00
更新:19/02/17 23:37

創樹( 富山 )

創樹(もとき)と申します。
葬祭系の生花事業部に勤務の傍ら、物書きもどきをしております。
小石 創樹(こいわ もとき)名にて、AmazonでKindle書籍を出版中。ご興味をお持ちの方、よろしければ覗いてやって下さい。
https://amzn.to/32W8iRO

ベリーショートショートマガジン『ベリショーズ』
Light・Vol.6~Vol.13執筆&編集
他、note/monogatary/小説家になろう など投稿サイトに出没。

【直近の受賞歴】
第一回小鳥書房文学賞入賞 2022年6月作品集出版
愛媛新聞超ショートショートコンテスト2022 特別賞
第二回ひなた短編文学賞 双葉町長賞

いつも本当にありがとうございます!

コメント投稿フォーム

違反報告連絡フォーム


お名前

違反の内容