涯灯

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ネオン輝く街の、とある路地裏を抜け、大きな木を左に曲がった先に、不思議な“街灯”があるというー。


引き裂かれた教科書を抱き締め、夜の街を歩く。
気づくと見慣れぬ路地裏を抜けていた。大きな木が見え、T字路に突き当たる。なんとなく左に曲がってみることにする。
すると、なんだか妙な“街灯”が目に入った。街灯に照らされたアスファルトは紺碧に染まり、星屑のような煌めきを帯びていた。
街灯に近づくと、ポールの部分に小さく“涯灯”の文字。

“涯灯”は僕だけを照らしていた。

紺碧のアスファルトが揺らめき、何かを映し出した。
僕が生まれてから、今夜電車に飛び込むまでの17年間。そして、僕がいなくなって涙する人の影。

僕は“独り”じゃなかった…。

そう気づいた瞬間、紺碧のアスファルトは、先ほどとは違ったものを映し出した。

“涯灯”は…僕だけの未来を照らしていた。
その他
公開:19/02/16 18:29
更新:19/11/26 11:42
街灯 涯灯 生涯を照らす街灯 今のその先へ ショートショートコンテスト節目

すみれ( どこか。 )

書くこと、読むことが大好きな社会人1年生。
青空に浮かぶ白い雲のように、のんびり紡いでいます。
・プチコン「新生活」 優秀賞『また、ふたりで』
・ショートショートコンテスト「節目」 入賞『涯灯』



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