代弁当箱

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4限目。腹の虫が鳴り、ぼくはそっと弁当箱に手をかけた。
「こら!早弁禁止!」
教室に響いたのは、先生ではなく母さんの声。それも弁当から。
代弁当箱は、作り手の一言を詰め込む発明品だ。

母さんは声がでかいから、弁当を食べるのが恥ずかしい。
「ピーマン残すな!」
「授業に集中!」
これが毎日続く。

それでも、母の言葉は時にぼくを励ました。
「試験がんばれ!」
「カツで受験に勝つ!」
お陰で大学に合格し、とうとう最後のお弁当。寂しい気持ちで蓋をそっと開けたが、しんとしたままだった。
心なしか、母のため息が聞こえた。

「そうだ」

帰宅すると、空の弁当箱をシンクに置く。
「もう、来月から一人暮らしでしょ。洗い物くらい自分でしんさい」
小言を言う母をよそに、自分の部屋へ退散する。

しばらくすると、 大きな声が部屋まで届いた。
「3年間、美味しい弁当ありがとおー!!」
その他
公開:19/02/17 13:53

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