キンジロウ

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二宮金次郎。
薪を運んでいる間も本を読んでいたという逸話を持つ人だ。

小学校の先生からその逸話を聞き、僕はその生き方がとてもかっこいいと思った。
僕もそんな風に努力できる人になりたい。そう思った。

モロに影響を受けた僕は、まず真似事から入った。
学校に通っている間も
風呂に入ってる間も
友達と遊んでいる間も
僕は本を読んだ。
とにかく本を読んだ。

いつものように本を読んで道を歩いている時、僕は交通事故にあった。
その事故で僕は命を落とした。

僕の葬儀で、母親が参列者にこう言っているのが聞こえた。

「親より先に逝くなんて馬鹿な子だよ」

…馬鹿?
あれだけ熱心に勉強したのに?
同じことをしたのに、二宮金次郎さんは賞賛されて、僕は馬鹿扱い?
僕の頑張りはなんだったの?

多くの本とともに、僕は召された。
もう二度と読むことはない本とともに。
ファンタジー
公開:19/02/17 02:40

坂尾 のぼる( 愛知 )

毎日1本、短編を書くのを目標に再度始めました。
暇なときにでもご一読ください。

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