大人のお菓子

「食べた途端、なんて言うのかなあ…心がすうっとしたんだよね。爽快感ってああいうことを言うのかな。晴れ晴れした気持ちっていえば分かるか？」
スーツを着た友人の形容しがたい感想を聞いて、「はぁ。」という言葉しか出てこなかった。

“ 大人”になった友人の元に、大人しか食べることが出来ないお菓子が国から送られてきた。
政府から定期的に送られるようになるというそのお菓子は、子供の頃からの憧れだった。なぜなら、送られてくる＝国から“ 大人”と認められたという証になるのだ。25歳になった僕の手元には、まだそれは送られてこない。
「なあ、いつ送られてきたんだよ。そのお菓子。」
「え、お前のところ…まだ届いてないのか？」
友人の問いには沈黙で返した。
「そうかそうか。お前はまだだったか。そうだなあ…」


友人は少し間をとって、口を開いた。

「“ ああ、今を受け入れなきゃな”って夢を諦めた時、かな。」