竜安禅師取材メモ 1/15 猫

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 開門前の冷たい朝、石庭を前に疑天竜安禅師にお話を伺った。
「石庭をどのようにお考えですか?」
「須弥山を表すというお話がございます」
「地獄から極楽までを表す宇宙のモデルですね… 石は15個ですから、15もの宇宙が?」
「お庭は一つなのでございます」
「宇宙は誕生と消滅とを15回繰り返していると? すると、私たちの住む宇宙は、どの石にあたるのでしょう?」
 その時、禅師の懐から猫が飛び出した。猫は庭を駆け回って箒目を踏み荒らし、苔をかきむしって塀の前で糞をすると、それを丁寧に埋めて油塀の外へ去っていった。
 私は唖然としていた。だが禅師は平然と、今、猫が糞を埋めた辺りを指し示して言った。
「あそこの白砂の一粒というところでしょうか」

 気がつくと私は、早朝の京都行きの新幹線で居眠りをしていた。そして取材用のICレコーダーには、呵々という笑い声が20分にわたって録音されていたのであった。
ファンタジー
公開:19/02/15 09:55
更新:19/02/15 21:01

新出既出

星新一さんのようにかっちりと書く素養に乏しく、
川端康成さんの「掌の小説」のように書ければと思うので、
ショートショートとはズレているのかもしれないです。
オチ、どんでん返し、胸のすく結末。はありません。
400文字、おつきあいいただければ幸いです。

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