あどけない冬の話

9
13

「東京に冬が無い」

僕は妻があどけない話でもしているのかと思ったが、雪国で育った妻はどうやら本心でそう言っているようだった。

次の週末、妻に誘われて電車に乗り、着いた先は肉まんの専門店だった。

高菜肉まん、エビチリ肉まん、ゴマ入りあんまんなど、色とりどりな中から、妻はホワイトアウト肉まんを2つ買った。

僕は肉まんを一口食べた。一口目は分厚い皮の部分しか食べることができなかった。「具が少ない」と妻に言おうと顔を上げると、目の前には一面の銀世界が広がっていた。

妻は嬉しそうに肉まんを頬張っている。
食べ進め、具に到達した瞬間、突然の猛吹雪で視界が真っ白になった。目の前にいるはずの妻の姿すらよく見えない。寒いを通り越して痛い。僕は急いで肉まんを食べ終えた。

最後の一口を食べ終えた妻はご満悦の様子だ。

毎日のように雪が降る白い冬が妻のほんとうの冬だという。

あどけない冬の話である。
その他
公開:19/02/14 11:54
スクー

ぱせりん( ひろしま )

北海道出身です。

コメント投稿フォーム

違反報告連絡フォーム


お名前

違反の内容