白い肉まん

5
6

寒空のもと、路地裏を身を縮めながらトボトボ歩いていると、不意に声をかけられた。
「おやおやぁ? 身も心も寒そうですねぇ」
薄暗闇から幽霊のようにスーッと現れたのは、黒々としたオールバックで、サングラスをかけたオッサンだった。
無視して通り過ぎようとした。
「お待ちなさい」
気付けば、目の前にオッサンの顔があった。
「な、何ですか……」
「この白い肉まんを差し上げましょう。とても美味しいですよ。きっと身も心も温まりますよ」
肉まん?
思わず受け取ってしまった俺は、とりあえず変な物でも入ってないか確認する事にした。
肉まんを割る。中身は……。
真っ白、だ。
「何も入っていないじゃないですか」
「おやおやぁ。見えませんか?」
見えないとはどういう事だ。
そう思っていると、突然オッサンが「フッ!」と肉まんの中に息を吹きかけた。
その瞬間……。

ブワァッ。

と、真っ白な雪虫の大群が舞い上がった。
その他
公開:19/02/14 23:59
更新:19/02/15 00:04
ホワイトアウト肉まん スクー

壬生乃サル

まったり。

2022年…3本
2021年…12本
2020年…63本
2019年…219本
2018年…320本 (5/13~)

壬生乃サル(MiBU NO SARU)
Twitter(@saru_of_32)

コメント投稿フォーム

違反報告連絡フォーム


お名前

違反の内容