クローン

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 ずいぶん長い間、眠っていた。眠っていたのではなくて今、初めてこの世で意識を持ったのではないかとも思えた。僕は半透明な膜に囲まれた部屋にいた。
「やあ、気がついたかい?」
「君は誰? 僕は一体、何者なの?」
「誰だろうね。一つわかっていることは、君は僕だし、僕は君だよ。分身さ。僕たちはこの部屋で育まれたのさ」
 部屋の中を見回すと自分と同じ者が何体もいた。
「僕たちはクローン? だから僕の中に記憶がないんだ」
「ん?! クローン?! そうとも言えるかもね。僕たちはしばらくここにいた方がいいだろうね」
「どうして?」
「とりあえずここは安全だからね。でも、出なければならない時がくるだろうね。とっても危険だけれど」
「何故、危険なの?」
「あれを見て」
僕に似たやつが外を指さした。そこには別の僕に似たやつが液体の中で無残な姿で横たわっていた。
「あいつ、塩素系消毒剤をかけられちまったんだ」
その他
公開:19/02/14 23:49
schoo 合宿も視野に入れたノロウイルス

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