出来心

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夜の街の帰り道でも、記憶という名の明かりに照らされている。私はふとそこから外れてみようと思った。ここを左折ではなく直進。大丈夫、方向なら分かる。3番目の角で左折、2ブロック直進して、ここらで右折するかな。見かけないコンビニにでも入ってみる。
「こんばんはー。」
中央にでかでかとクーラーボックスがあって、四方も全てアイスの棚だ。この寒い季節に…そういえば「いらっしゃいませー」じゃない挨拶も近所のコンビニでは聞かないなあ。試しに「ギムネマソフト」を買ってみた。風に吹かれてアイスを食べながら行く家路。遠くに海老を模した電波塔が見え、客もいないのに叩き売りの声が響く商店街を抜けると、無人の交番に電話が鳴っている。試しに取ると、息子の声で「ガピー!プシュウゥゥ…」。帰宅という目的を思い出して元の道に戻る。
呼び鈴を鳴らした。
「あなたー、お帰りー。」
妻ではない女に迎えられて、私はマフラーを脱いだ。
SF
公開:19/02/12 21:21
更新:19/04/18 19:55

北瓜 彪

ショートショート講座(2019年7〜9月期)にも参加
しました。
皆様宜しくお願いしますm(_ _)m

※アルファポリス
https://www.alphapolis.co.jp/author/detail/664452356
でも活動しています。SS講座で提出した作品「ファンフラワーに関する見聞」「大自然」もそちらで公開しております。
 

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