逆境のヒロイン(SSGという宇宙の中で(仮))
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退屈な古典の授業中に、今日のそれは起こった。
空と地面との区別のないひどく空気の薄い場所。一日に一度、私はそんな世界へ放り込まれる。辺りには人の形をしたゴムの塊が転げている。継ぎ目のない、赤や紫や黒のツルツルしたゴム臭いゴム同士が躰をこすりつけあって、耳障りな音を立てている。私はそのどぎつい色や音や匂いが嫌だ。
青いゴムの着衣一式を携えた執事がやってきて、これは私のものだと心の中へ直接、声をねじ込んできた。誰が好き好んで、頭の先からつま先まで、ぴっちりとした息苦しいゴムの中に、身体を包みこんで、身動きもままならないまま、同じゴム人間達の中に横たわって、あの耳障りな音を響かせたいと思うだろう?
「けれども、まさにそれが君なのではないのか?」
誰かの声が聞こえた。私は教室に戻っていた。
音も光も匂いも遠くに感じられるいつもの日常のなかで、今、私の舌には、あの苦いゴムの味が残っていた。
空と地面との区別のないひどく空気の薄い場所。一日に一度、私はそんな世界へ放り込まれる。辺りには人の形をしたゴムの塊が転げている。継ぎ目のない、赤や紫や黒のツルツルしたゴム臭いゴム同士が躰をこすりつけあって、耳障りな音を立てている。私はそのどぎつい色や音や匂いが嫌だ。
青いゴムの着衣一式を携えた執事がやってきて、これは私のものだと心の中へ直接、声をねじ込んできた。誰が好き好んで、頭の先からつま先まで、ぴっちりとした息苦しいゴムの中に、身体を包みこんで、身動きもままならないまま、同じゴム人間達の中に横たわって、あの耳障りな音を響かせたいと思うだろう?
「けれども、まさにそれが君なのではないのか?」
誰かの声が聞こえた。私は教室に戻っていた。
音も光も匂いも遠くに感じられるいつもの日常のなかで、今、私の舌には、あの苦いゴムの味が残っていた。
その他
公開:19/02/12 20:54
星新一さんのようにかっちりと書く素養に乏しく、
川端康成さんの「掌の小説」のように書ければと思うので、
ショートショートとはズレているのかもしれないです。
オチ、どんでん返し、胸のすく結末。はありません。
400文字、おつきあいいただければ幸いです。
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