ウマクナール

一人暮らしを始めてから、近所の奥さんが訪ねて来るようになった。
なにかと息子のように世話を焼いてくれる。助かってはいるが、夕食用の料理を毎日持って来られるのは、正直困っている。正直言うと、まずいのだ。

そんな時、友人のＫが訪ねてきた。その事を相談すると、Ｋも妻のまずい料理に悩んでいたらしく、ある科学者から、どんなまずい料理も美味しくなるウマクナールという薬を手に入れたらしい。僕は友人からその薬を分けてもらうことにした。どうやら副作用の心配はないようなので、試してみることにした。

その日も近所の奥さんが、料理を持って来て帰った。

「うまい！」まるで高級料理店のディナーを食べているようだ。食前に飲んだあの薬のおかげだ。効果は一錠で一年続くらしい。夕食が楽しみだ。

ある日を境に奥さんの料理がまずくなってきた。
「私ね、料理教室に通うようになったのよ。もっと美味しい料理作ってあげるからね」