伝心レンジの告白

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僕はもう決めていた。明日、ゆきちゃんに告白をする。
別にイベントにかこつけたいってわけじゃない。バレンタインだったら、伝心レンジで作ったものを渡しやすいってだけだ。
僕んちのレンジは伝心レンジで、これでちょっとチンすれば、いつだって気持ちはばっちり伝わる。仲良くなりたいときや、ケンカのあとも。だから明日もきっとそうだ。

「で、なんなの?」
「え、なにって、伝わらない?」
ゆきちゃんは僕の作ったチョコを飲みこんだあと、もうひとつを僕の口へ押し込んだ。口の中には、僕のゆきちゃんへの気持ちとオレンジピールのほの苦さが、同時に広がっていく。伝心レンジに不具合はない。
そのあいだもゆきちゃんは、不服そうにじっと僕を見ていた。
そこで、僕はやっと気がついた。大事なことがすっかり頭から抜け落ちてたってことに。
僕は深く息を吸うと、もう一回ゆきちゃんに心を伝えた。

今度はちゃんと、僕の言葉にくるんで。
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公開:19/02/13 21:45

ゆた

高野ユタというものでもあります。
幻想あたたか系、シュール系を書くのが好きです。

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