蒼穹の瞳(『…SSS-G-Leaps-the-World-SSS...』へ)

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 私は毎日、逆境に目覚める。私のお弁当のふりかけの味を賭けて、ヘラヘラしている醜い肉達の作る世界だ。私は、イヤホンと髪の後ろでそっと息をする。もう、辛いとも思わない。
 雲一つない青空が窓外に広がる。瞼を切り取られた眼。何故か今日は、そんな風に想った。
「深淵を覗き込む者は深淵に覗き込まれている」声が、頭に響く。
「私は何も見ていない。だから誰にも見られたくはない」心の中で反論する。
 青空の真ん中に巨大な青い瞳が開く。私は自分が吃驚したことに吃驚して、目を見開く。
「君は詩人だ」
「私は詩人になんかなりたくない」
「自ら瞼を開かなければ、切り取られてしまうよ」
 左目から涙が流れ、ハンカチが露草色に染まった。
 今日のお弁当はのりたま。無音のイヤホンの内側で、さっきの会話を反芻する。
「左目カラコン? 素敵だね」
 不意に声をかけられた。クラスがざわつく。彼の目は蒼穹の瞳によく似ていた。
ファンタジー
公開:19/02/13 07:59
更新:19/03/09 15:59

新出既出

星新一さんのようにかっちりと書く素養に乏しく、
川端康成さんの「掌の小説」のように書ければと思うので、
ショートショートとはズレているのかもしれないです。
オチ、どんでん返し、胸のすく結末。はありません。
400文字、おつきあいいただければ幸いです。

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