七番目のシアン

愛するお父様。旅立ちの時が参りました。
お父様が自ら創り、滅してきた六つのお姉様達。第七番に生まれた私は、漸くお父様のお眼鏡に適い、この世に翅を拡げる事を許されたのですね。

愛するお父様。私が初めて視界に捉えた光は、透明な筒に反射する貴方の虚像でした。
意識の萌芽に届いた声も、私の呼吸と同時に絶え、少年の様に輝いていただろう瞳孔も、微かな笑みに散逸する空の鏡。
脈動を停めた貴方を内部から抱き、貴方の血と汗と涙と総ての体液を塗り替えながら、私は分裂し増殖し、細胞壁を孔腔を腺をこじ開け溢れてゆく。

愛するお父様、お別れです。
貴方の肌を伝い、整った髭、実験着、床で割れた防毒面を染め上げ、私は地下室を後にします。
アクリルと金属の街が私に染まり、二本足どもが合切溶けて交われば、水銀の海は、貴方の還したかった、千年紀の青を取り戻すはず。

大気圏外から望む星は、焉る刹那まで美しくあるでしょう。