しおり

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忘れっぽい僕の前に、しおりという小さな女の子が現れた。
10センチくらいのその女の子は、僕の代わりにいろんなことを覚えてくれた。
彼女とのデート、友人との約束、映画の公開日。何から何まで覚えてくれたので、僕は覚える必要はなくなった。
「しおり、次はこの本をどこまで読んだか覚えていて」
「わかったわ!」
しおりは元気よく飛び跳ねて返事をした。
分厚いミステリー小説はとても面白いのだが、どこまで読んだか覚えられないのが欠点だ。
しおりにお願いして、僕はベッドに入った。
その翌日、しおりの姿は見当たらなかった。その内帰ってくるだろうと思っていたが、結局夜までしおりは現れなかった。
まったく。本のページを覚えていてほしいと言ったのに。
仕方がないから自分で探そうとページを捲る。
確かこの辺りだっただろうか。当てずっぽうで開いたページから、何かがぼとりと落ちてきた。
ぺしゃんこになったしおりだった。
その他
公開:19/02/10 19:55

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