舟を漕ぐ

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パキッと上手に落花生を割る人だった。親指と人差し指で落花生の頭あたりを押すと、綺麗に縦の割れ目ができる。それは子どもの目には凄技だった。
「指が小さいから、マサ君には無理かな」
おばさんが僕と掌を合わせて大きさを見る。それからまた落花生をパキッと割って、黙々と実を食べたりくれたりした。
「舟みたいだね」
僕がいうと、おばさんは綺麗に割れた殻を並べてくれた。一寸法師が乗れそうな落花生の船。たまに崩れた実が溢れて落ちた。
「どうして割れてるの?」
「さあ、それはわからない」
「中で死んじゃったの?」
「生まれる前から死んでたのかも」
パキッと音を立てて、舟が並ぶ。舟には落花生の実が眠ったように転がっている。
「植えたら育つかな?」
「育つよ、やってみるかい?」
僕はやってみた。小舟に眠った落花生を起こしたくなった。死んだみたいな落花生が、本当は生きてるって確かめるために。
その他
公開:19/02/12 08:08
更新:19/02/14 08:23
市販品は炒り豆だから駄目らしい (´・ω・`)

風月堂( 札幌 )

400文字の面白さに惹かれて始めました!
文字や詩のようなものを書くのが趣味です。
情緒不安定気味でアゲサゲ落差のひどい人間ですw
いろんな方々の作品を読んで、心を豊かにしていきたいです。

無料の電子書籍をつくりました。
『ショートショート作品集カプセルホテル【】SPACE』
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『枇杷の独り言』
ショートショートコンテスト『家族』最優秀賞頂きました。

写真は全て自前でやっています(笑)

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