お約束。

私はイヌである。
否…実は地球を侵略するためにやってきた宇宙生物なのだ。
地球人、特に日本人というのは、いわゆるお約束やベタな展開というものが好きらしく、彼らの生活に入り込む事はわけがなかった。
雨の中、段ボールとかいう箱に入って少し心細そうな声で鳴いてみせればいい。抱き上げてもらえばこっちのもの、尾を振って頰をひと舐めすればイチコロだ。
私もそんなマニュアルに従って地球人の一家庭に難なく侵入し、侵略準備を始めようとしたわけだが…

まさか地球人の家族というものが、あんなに温かいモノだとは思わなかった。
以前に報告で、同じ種族で殺し合い、自らの血族さえも手にかける冷酷で愚かな生物だと聞いていたのに。
ベタな展開もただの娯楽かと思っていたのだが、どうやら違ったようだ。

彼らとの穏やかで温かな生活をもう少しだけ続けたくなってしまった。

やれやれ…私としたことが。
この展開もお約束、かな？