白いパラダイス

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「本当にこの辺ですか? 雪室(ゆきむろ) 」
間違いない、と先輩は黒く焼けた顔で頷いた。
「なんで家のフリーザーにしまわないかな」
「家が雪で潰れても、生き延びられるようにだべ」
ゆうべ先輩と俺はしたたか酔い、家の食料を食い尽くしてしまった。ひどい雪で車も出せない。
すると先輩が、近くの雪室に冷凍肉まんを保存していると言い出したのだ。
誰も踏んでいない一面の雪景色が好きな俺と
「白は冷てぇ! 茶色や黒の土こそいいんだべ!」
と酔って叫ぶ先輩は、趣味は合わぬが気は合う。

上下左右不明なホワイトパラダイスを先輩の足運びから目を離さず長時間かけて進み、ようやく雪室から肉まんをゲットした。
レンジの扉を開けると眼鏡が蒸気で曇り視界がまたホワイトに。お蔭で美味さが倍増だ。
と、先にかぶりついていた先輩曰く。
「うめぇけど、やっぱり黒糖まんに限るべ」
ここまできても、ホワイトはアウトかよ……。
その他
公開:19/02/09 12:59
スクー ホワイトアウト肉まん

UKITABI

ショートショート初心者です。
作品をたくさん書けるようになりたいです。

「潮目が変わって」(プチコン 海:優秀作)
「七夕サプライズ」(七夕ショートショートコンテスト:入選)
「最高の福利厚生」(働きたい会社 ショートショートコンテスト:入選)
選出いただきました。

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