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猛吹雪の中、奇跡的に見つけた山小屋に避難して5日が経った。降り続ける雪と北風に山小屋はギシギシと音を立てていた。携帯の電波も届かず、食料は底をついた。腹が減った。体を横たえ瞳を閉じる。次に眠ったら、二度と目覚めないかもしれない。
「僕を食べて元気を出して」
小さく声が聞こえた。うっすらと目を開けると、目の前に見慣れた赤い長方形の箱が揺れていた。
「僕はポッキー」
ポッキーだった。リュックの中に隠れていたのか。それとも小屋にあった誰かの忘れ物か。いずれにしてもポッキーが喋るなんて馬鹿げている。これは幻覚か。いや、そんなことはどうでもいい。俺はポッキーに手を伸ばし、そして掴んだ箱の軽さに絶望した。
「空じゃねぇか」
思い出した。数日前に食った最後の食料がこれだった。
「僕を食べて元気にーー」
言い終わらないうちに俺はポッキーの箱に噛みついた。
「痛い痛い痛い…」
箱は微かにチョコの香りがした。
「僕を食べて元気を出して」
小さく声が聞こえた。うっすらと目を開けると、目の前に見慣れた赤い長方形の箱が揺れていた。
「僕はポッキー」
ポッキーだった。リュックの中に隠れていたのか。それとも小屋にあった誰かの忘れ物か。いずれにしてもポッキーが喋るなんて馬鹿げている。これは幻覚か。いや、そんなことはどうでもいい。俺はポッキーに手を伸ばし、そして掴んだ箱の軽さに絶望した。
「空じゃねぇか」
思い出した。数日前に食った最後の食料がこれだった。
「僕を食べて元気にーー」
言い終わらないうちに俺はポッキーの箱に噛みついた。
「痛い痛い痛い…」
箱は微かにチョコの香りがした。
ファンタジー
公開:19/02/09 09:35
更新:19/02/09 20:18
更新:19/02/09 20:18
月の音色リスナーです。
ようやく300作に到達しました。ここまで続けられたのは、田丸先生と、大原さやかさんと、ここで出会えた皆さんのおかげです。月の文学館は通算24回採用。これからも楽しいお話を作っていきます。皆さんよろしくお願いします。
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