繭玉のある談話室

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「何者でもないという自由…」
「自由って、とても孤独なものね。だけど、周りの人を慈しむ態度を不自由だとは呼びたくないな」
「孤独を捨てる自由を、感じることのできる強さ」
「頑なにならないで… でも、なかなかうまくはいかないね」
 スコーンとティー。チーズorマーマレード? ミルクorレモン?
 午後三時の談話室のざわめきの中、僕は先生の前で、先生の生徒だった頃の自分を取り戻しつつあった。
「失いたくないものばかりなのは、その隙間の形こそが自分だからです」
「隙間…」
 少し渋みを増したアッサムミルクティー。くるくると立ち上る湯気。
「僕は、人というのは、川の淀みに溜まったゴミのようなものだと考えていて―」
 先生の前では、素直になろうとすることこそが不自然だった。僕は、その場限りの言葉で組織した繭玉に閉じ籠って、先生の前に転げ出る。それを先生にほぐしてもらい、先生に、煮殺されたいのだった。
青春
公開:19/02/10 14:10
更新:19/03/09 16:00

新出既出

星新一さんのようにかっちりと書く素養に乏しく、
川端康成さんの「掌の小説」のように書ければと思うので、
ショートショートとはズレているのかもしれないです。
オチ、どんでん返し、胸のすく結末。はありません。
400文字、おつきあいいただければ幸いです。

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