おたまじゃくし

28
21

「熱っ!」
夕食を作っていたら、右腕に思い切り油がはねた。ヒリヒリしたが、まあ良いと放っておいたら、右腕に3ヶ所、こげ茶色のシミができていた。まるでおたまじゃくしのような模様だ。
真夜中、チャプンという水音で目を覚ますと、薄明かりの中で、右腕がぼんやりと光り、水面のように波立っていた。三匹のおたまじゃくしがスイスイ泳いでいる。
なんとも愛らしい姿に見惚れ、特に害もないのでそのままにしておくと、一ヶ月後には、手が生え、その二週間後には足が生えていた。
やがて蛙になった3匹は仲良く泳ぐだけでは飽き足らず、腕の上でジャンプまでするようになったが、急などしゃぶりの夕刻、慌てて洗濯物を入れようと庭に出ると、右腕から蛙がピョーンと飛び出し、アレという間にゲコゲコと庭の茂みに消えていった。

やれ、寂しくなったなと思っていたら、右腕がザワつき、いつの間に卵から孵ったおたまじゃくしがウヨウヨとしていた。
その他
公開:19/02/10 01:02

むう( 地獄 )

人間界で書いたり読んだりしてる骸骨。白むうと黒むうがいます。読書、音楽、舞台、昆虫が好き。松尾スズキと大人計画を愛する。ショートショートマガジン『ベリショーズ 』編集。そるとばたあ@ことば遊びのマネージャー。

コメント投稿フォーム

違反報告連絡フォーム


お名前

違反の内容