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オフィス街の一角、昼休みにだけ開くマスク屋台がある。
「マスク無料交換」という看板を見て、女性会社員が尋ねた。
「なんで、無料なんですか?」
「私たちは息成分による病変診断研究をしておりまして、サンプルとしてマスクは有用なのです。検査結果報告ご希望の場合のみ、ご連絡先をご記入ください」
と、白衣の男は答えた。
そういう研究は聞いたことがあったし、マスク無料は有難い。彼女は、マスクを外すと「30代女性」の箱に入れ、新しいマスクを選んでつけていった。
午後二時。帰宅した男は、箱の前の隠しカメラの動画と照合しながら、一枚ずつマスクを取り出していった。厳選の結果、残ったマスクは七枚だった。
ZIPロックの袋へそれぞれの顔写真を貼り、マスクを封入して保管庫へ。そしてそこから別の袋を抜き出す。
男は、その袋からマスクを取り出し、袋の顔写真を凝視しながら厳かに装着すると、深呼吸を繰り返した。
「マスク無料交換」という看板を見て、女性会社員が尋ねた。
「なんで、無料なんですか?」
「私たちは息成分による病変診断研究をしておりまして、サンプルとしてマスクは有用なのです。検査結果報告ご希望の場合のみ、ご連絡先をご記入ください」
と、白衣の男は答えた。
そういう研究は聞いたことがあったし、マスク無料は有難い。彼女は、マスクを外すと「30代女性」の箱に入れ、新しいマスクを選んでつけていった。
午後二時。帰宅した男は、箱の前の隠しカメラの動画と照合しながら、一枚ずつマスクを取り出していった。厳選の結果、残ったマスクは七枚だった。
ZIPロックの袋へそれぞれの顔写真を貼り、マスクを封入して保管庫へ。そしてそこから別の袋を抜き出す。
男は、その袋からマスクを取り出し、袋の顔写真を凝視しながら厳かに装着すると、深呼吸を繰り返した。
その他
公開:19/02/08 11:42
更新:19/05/28 11:43
更新:19/05/28 11:43
シリーズ「の男」
星新一さんのようにかっちりと書く素養に乏しく、
川端康成さんの「掌の小説」のように書ければと思うので、
ショートショートとはズレているのかもしれないです。
オチ、どんでん返し、胸のすく結末。はありません。
400文字、おつきあいいただければ幸いです。
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