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「癒やしの廻転木馬」が目的で私はその遊園地を訪れた。
意外にも他に客はおらず、すんなりと木馬に乗ることが出来た。
「足元に気をつけて」
跨がる際に係員に言われ、床を見ると無味乾燥な黒一色だった。
木馬が廻りだし、私の体が上下に動くと同時に、軽やかな音楽が流れ始めた。
それは耳に入ってくるというより、音が体中を流れているような感覚だった。
噂に違わぬ効用で、廻転が止まる頃には、嘘のように心が和らいでいた。
木馬から降りようとしたとき係員が再び声を掛けてきた。
「足元に気をつけて、踏んだら割れてしまうんで」
そこで私は黒い床の正体が巨大なレコード盤であることに気が付いた。
ファンタジー
公開:19/02/08 07:27
更新:19/02/08 08:02

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