チョコレートは北風の夢を見る。

北風さんは嫌われている。
北風さんが来ると、皆が身を竦めて顔を背ける。
室内に入ろうとすれば、皆が躍起になって外へ締め出そうとする。
苦しい時、辛い時には、北風さんを引き合いにだして、人生の北風だとか勝手なこと言うの。

皆、ひどい。絶対に誤解してる。
確かに人へ厳しく当たって、冷たく感じると思う。
私もそう思ってた。
でも、でもね。本当はとっても優しいの。それが北風さんの優しさなの。

皆が早く家族の待つ家に帰るようにと。
何気ない日常の尊さを教えようと。
恋人たちの距離が少しでも縮むようにと。

皆の体に心に冷たく当たって来るのよ。

ほら。今だって。
私の身体が溶けないように冷たく当たってくれている。
身も凍るような貴女の優しさが何よりも愛おしいと、チョコレートは思うのです。