遺伝子裁判

0
9

法廷に若い男の声が響き渡る。
「この男のせいで僕の人生はめちゃくちゃです!
部活では練習せずに落ちぶれ、まともに勉強せず受験には落ち、大学では出席が取れず留年しました。
全てこの父親の怠惰な遺伝子のせいなのです!」
息子は声高に主張した。

では被告人前へ、と裁判官が言うと父親らしき男が前に立ち弁解を始めた。
「私は確かに怠惰な人間でした。なにかに真剣に取り組むことは少なかったと自覚しています。
しかし私は守るべきものが増えてから勤勉になりました。家族がいて今は幸せです。
ゆえに私はただ……そんな幸せが彼の未来に遺伝することを願っております」
父親は力強く言い放ち後ろに下がった。

そして裁判官は険しい面持ちのまま口を開いた。
「判決を言い渡す。逃れられない遺伝という運命から受けた精神的苦痛を鑑み、原告が遺伝子改良を行う場合の全費用支払いを被告人に命ず!」

その後二人は和解したという。
SF
公開:19/02/08 15:25
更新:19/02/08 15:33

空岸なし

読んでくださりありがとうございます!たまに更新したりしたいなと思ったりしたりしています。https://mobile.twitter.com/sorakky0

コメントはありません

コメント投稿フォーム

違反報告連絡フォーム


お名前

違反の内容