北風に乗せて

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舞い散る雪の中、真っ暗な河川敷を歩いているのは彼一人だけ。雪と泥でぐちゃぐちゃな道を、足元を見て転ばないように慎重に歩いていた。
あの子が待っている部屋に帰るために…。
私は北風に乗せて彼の周りにチョコレートの香りを運んだ。彼が気づいて顔を上げた。キョロキョロと周りを見渡し、それから幸せそうに微笑んだ。部屋で待ってるあの子の顔を思い浮かべたのかもしれない。
なんだかムカついた。
来年のバレンタインは手作りチョコを渡すって約束だったから、北風になって香りだけでも届けてあげようと思ったのに。
私が死んだ後、彼女作るの早すぎないか?
彼が笑顔なのは嬉しい。
けど、寂しいし悔しい。
私は風をぶつけて彼の足を掬った。彼は靴を滑らせ転倒し、ぐしゃぐしゃの雪と泥にまみれた。その姿はチョコレートソースを頭からかぶったみたいで、私は可笑しくて風を震わせた。

ハッピーバレンタイン
幸せになってね
バイバイ
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公開:19/02/06 22:36

のりてるぴか( ちばけん )

月の音色リスナーです。
ようやく300作に到達しました。ここまで続けられたのは、田丸先生と、大原さやかさんと、ここで出会えた皆さんのおかげです。月の文学館は通算24回採用。これからも楽しいお話を作っていきます。皆さんよろしくお願いします。

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