夜が隠れてる

9
9

 少年は、変わっていた。
 遠足で自然公園に来ているのだろう。たくさんの園児達が芝生の上を駆け回る中、その少年一人だけが、大きな木の陰で三角座りをしている。
 つまらなそうにしている少年に、男は近づくと、その優しそうな顔に笑顔を浮かべて言った。
「君はみんなと遊ばないの?」
「うん」
「どうして? みんなが嫌いなのかい?」
「ううん。みんなは好きだよ。でも明るいのが嫌いなんだ。僕は夜が好き」
 少年の答えを聞いた男は、手のひらをもう片手の拳でポンと打つと、少年に向かって言った。
「そうか。夜が好きなんだね」
「うん。夜はいらないものは見えないし、何でも綺麗に見える」
「そうかい。おじさんも夜は好きだよ」
 そう言うと男は、ポケットから虫眼鏡を取り出した。
「実はね、太陽をよく見ると夜が隠れているんだよ。見てごらん」
 少年は受け取った虫眼鏡で太陽を観察した。

「ほんとだ!夜が見えるよ!」
ホラー
公開:19/02/06 21:14

花脊タロ( 京都 )

純文学系の作品を読むのが好きなので書く方も純文学よりのものが多くなります。

ご感想頂けると大変嬉しいです。

Twitterも是非フォローしてください。
ホームページには自身の全作品をまとめて掲載しています。
Twitter→http://twitter.com/hnctaro
ホームページ→http://hnctaro.wordpress.com

コメント投稿フォーム

違反報告連絡フォーム


お名前

違反の内容