紙パックのイヌ

納戸を整理していたら何かの紙パックが見つかったのでそれを折って遊んでいたらイヌみたいなものができた。それが「ワン！」って鳴いたのでどうやら本物のイヌになってしまったみたいなので、急いで薬局にドッグフードを買いに行った。それをあげたら犬食いで食べたのでやっぱり本物のイヌだと分かって散歩に連れて行くことにした。リードは納戸から出てきたビニール紐で代替することにした。イヌは心底嬉しそうにはしゃいだ。近所を歩かせていたら向こうからワニを連れた女の人がやってきたので
「珍しいですね。」
と声をかけたら
「あなたのは普通ね、イヌだなんて。」
と返された。悔しくて咄嗟に紙パックを壊そうとしたら噛みつかれ、やっぱりイヌだと思った。女の人と別れた直後にイヌは路上のゴミバケツに入った。資源ごみ用の。ぼくの手にほどけたビニール紐が残った。このために散歩がしたかったのか。分別は大事なんだと思った。