深い傷な。

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ともだちの名は暴君。
それはそれはひどいヤツだ。
つきあいはじめたばかりの僕の彼女にヤツは告白をした。
彼女をデートに誘いたいからと僕に金を貸せと言う。
前の借金を返してもらってないからと断ると「それでもともだちかよ」とヤツは僕を殴った。
ヤツは彼女を口車に乗せて我が物顔で街中を走りまわった。
それでも僕は黙って見ていた。この街でヤツに逆らえる者などいない。
ヤツは1200年続く破壊家の当主だ。気にくわないものは破壊して、気に入ったものは奪い取る。そしていつか壊してしまう。
やさしさや、慈しみや、あたたかさなどは持ち合わせていない。壊して壊して壊すだけ。
僕の心はズタズタだけれど、なぜかヤツを嫌いになれない。
僕はもっと無茶苦茶にされたかったのに、それからヤツは僕を壊さなくなった。
愛を知ったとヤツは言う。
もっと壊せよ!

僕の名はブロークン。
ヤツが僕から離れてゆく。
あぁ!
公開:19/02/07 10:23
更新:19/02/07 13:46

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