壁猫1。

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店裏の壁に煙草の焦げを見付け、しゃがんで肩を落とす。
今月に入って何度目だろう。すぐ脇の通りを挟んで有名な不良校があり、近隣の店は軒並み煮え湯を飲んでいる。
硝子を投石で割る。商品や掲示物を壊す。スプレーで落書きする。万引きや夜中の騒音。学校を訴えても、紋切りの詫びで終わりだ。業を煮やしてカメラを設置するも、悪戯で駄目にされて諦めた。

散らばった吸い殻やゴミをバケツに投げ込む。ばら撒かれるよりマシかと置いたが、効果は薄い。
ペンキを塗ったところで、上に捺される鼬ごっこ。あちこち剥げて黒ずみ、落葉か花でも散らした様。それでも消さないと、次が怖い。
白で潰す気だったが、思い立って色筆を握る。焦げを繋ぎ、背伸びをする猫を描く。色を変えて棚を据え、猫の手元へ鍵の束などあしらう。悪くない絵だ。

翌日、宙に浮いた猫の下に、踏み台が描き足してあった。
――なかなか味な真似をする。つい笑ってしまった。
ミステリー・推理
公開:19/02/05 14:00
※画像はシールと実物MIXです

創樹( 富山 )

創樹(もとき)と申します。
前職は花屋。現在は葬祭系の生花事業部に勤務の傍ら、物書き(もどき)をしております。
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ベリーショートショートマガジン『ベリショーズ』
Light・Vol.6~Vol.12執筆参加
他、note/monogatary/小説家になろう など投稿サイトに出没。

【直近の受賞歴】
第一回小鳥書房文学賞入賞。2022年6月アンソロジー出版
愛媛新聞超ショートショートコンテスト2022 特別賞受賞

いつも本当にありがとうございます!

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