壁猫2。

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この間から気分が良い。
近くの高校の不良が、店裏の壁に悪さするのに辟易していた。煙草の焦げを隠す為、猫の絵を描いた。
店が荒れる状況は、そう変わらない。ただ、壁の猫を眺めて気が和む。
棚の鍵にじゃれる猫。ここに誰かが踏み台を足した。逆さにした籠。本物かと思う程、配色もタッチも上手い。

これで終わるには惜しく、棚の横に本を描いた。
数日後、本の下に灯りを据えた棚が置かれ、柱が建った。猫の手元の鍵はアンティークに。植栽の置物まで追加された。
期待が膨らんだ。
棚に時計を乗せ、右に余白を残して待つ。
1日。2日。3日。――1週間。1か月。半年。

卒業式の夕方。
校庭に溢れる派手な頭。煙草や酒、爆竹、スプレー缶。
所詮子供の気まぐれ。箒を振り被って裏へ出る。

壁に猫が増えていた。
散らかったゴミは掃除されて煉瓦道に。壁の黒ずみは花柄に。
洗ったバケツの水には、小さな花束が一杯挿してあった。
ミステリー・推理
公開:19/02/05 14:01
※画像の半分は実物です

創樹( 富山 )

創樹(もとき)と申します。
前職は花屋。現在は葬祭系の生花事業部に勤務の傍ら、物書き(もどき)をしております。
小石 創樹(こいわ もとき)名にて、AmazonでKindle書籍を出版中。ご興味をお持ちの方、よろしければ覗いてやって下さい。
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ベリーショートショートマガジン『ベリショーズ』
Light・Vol.6~Vol.12執筆参加
他、note/monogatary/小説家になろう など投稿サイトに出没。

【直近の受賞歴】
第一回小鳥書房文学賞入賞。2022年6月アンソロジー出版
愛媛新聞超ショートショートコンテスト2022 特別賞受賞

いつも本当にありがとうございます!

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