店の名は。

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四十の誕生日を機に夢を追う決断をした時、周囲は猛反対した。
独り身とはいえ、若くない年齢で安定した収入を捨てるなど無責任だと。
親族、会社の上司や同僚から散々考え直せと諭された。
そんな毎日に疲れ、夢を諦めようと思った。
撤回すれば、今まで通りの平和な人生を歩める。
そう思いかけた会社帰りの道で、その店に出会った。
半ば誘われるように入り、無愛想な店主から商品を購入した。
それからは誰に何を言われても心が揺れる事はなかった。

あれから何年経っただろう。
画家として成功はした。しかし、壁にぶつかった。
今のままの路線で世間に求められる成功の道を歩み続けるか、自分の中に芽生えつつある新しい表現を模索して一から出直すか。
そんな迷いに応えるようなタイミングでその店はまた現れた。
相変わらず無愛想な店主から商品を購入した。
これでまた自分の道を歩いて行ける。


店の名は、わからず屋。
その他
公開:19/02/03 14:47

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