宝石神話:九月『賢婦の決意』
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空洞と化した元愛の巣で、乙女は怒りに震えていた。
美の女神が嫉妬した艶麗も、今は冥府の鬼女の面。乙女の背後では、様子見に来た風神が、彼女の剣幕に恐れをなし、帰りたがっている。
昨夜、乙女は夫に逃げられた。
実質夫婦でない為、夫(仮)かも知れぬ。詳しい経緯は省くが、愛の神とやらが乙女に懸想し、強引に嫁がせた。
三食昼寝付きの贅沢をしばし満喫したが、夫が彼女を訪れる時、常に邸は真っ暗。指一本触れる形跡もない。多少自身の魅力に不安を感じた乙女は、眠る夫を内緒で照らした。
――そして今に至る。
背中の翼をぱたぱたさせ、文字通り泣いて逃げた、小さなお尻。
愛の神に愛された事は名誉としても。乙女は乳児に萌える性癖の持ち主ではない。
勝手に逃げて、いじましく使いを寄越す。尻の青い小僧が。
ぐしゃり。乙女の拳で、結納に贈られた青玉の蝶が砕けた。
相分かった。その腐った性根、徹底的に叩き直してくれる!
美の女神が嫉妬した艶麗も、今は冥府の鬼女の面。乙女の背後では、様子見に来た風神が、彼女の剣幕に恐れをなし、帰りたがっている。
昨夜、乙女は夫に逃げられた。
実質夫婦でない為、夫(仮)かも知れぬ。詳しい経緯は省くが、愛の神とやらが乙女に懸想し、強引に嫁がせた。
三食昼寝付きの贅沢をしばし満喫したが、夫が彼女を訪れる時、常に邸は真っ暗。指一本触れる形跡もない。多少自身の魅力に不安を感じた乙女は、眠る夫を内緒で照らした。
――そして今に至る。
背中の翼をぱたぱたさせ、文字通り泣いて逃げた、小さなお尻。
愛の神に愛された事は名誉としても。乙女は乳児に萌える性癖の持ち主ではない。
勝手に逃げて、いじましく使いを寄越す。尻の青い小僧が。
ぐしゃり。乙女の拳で、結納に贈られた青玉の蝶が砕けた。
相分かった。その腐った性根、徹底的に叩き直してくれる!
ファンタジー
公開:19/02/02 09:00
誕生石と神話
九月:青玉(サファイア)
愛の神エロスとプシュケ
創樹(もとき)と申します。
葬祭系の生花事業部に勤務の傍ら、物書きもどきをしております。
小石 創樹(こいわ もとき)名にて、AmazonでKindle書籍を出版中。ご興味をお持ちの方、よろしければ覗いてやって下さい。
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ベリーショートショートマガジン『ベリショーズ』
Light・Vol.6~Vol.13執筆&編集
他、note/monogatary/小説家になろう など投稿サイトに出没。
【直近の受賞歴】
第一回小鳥書房文学賞入賞 2022年6月作品集出版
愛媛新聞超ショートショートコンテスト2022 特別賞
第二回ひなた短編文学賞 双葉町長賞
いつも本当にありがとうございます!
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